こすなの読んだもの

読んだ本の備忘録

『夜よ鼠たちのために』連城三紀彦

 

 

あらすじ:ある夜、画家の真木祐介のもとに新宿のホテルで妻の死体が発見されたとの報せが入る。しかし真木は先ほど自分の手で妻を殺し庭に埋めたばかりだった。(『二つの顔』)

 

仕事を辞め田舎に帰った若い刑事からかつての上司・岩さんに手紙が届けられる。それには退職を決意するきっかけとなったとある誘拐事件の真相について綴られていた。(『過去からの声』)

 

アパートの管理人であるサワは、父と2人暮らしをする車椅子の少女・千鶴が意識を失っているのを目撃する。どうやら首を絞められたらしいが千鶴は犯人について頑なに喋ろうとせず……(『化石の鍵』)

 

興信所に勤める男・品田は土屋という依頼人から妻・沙矢子の浮気調査を依頼される。尾行調査を続けるうち沙矢子に存在がばれ、「夫に嘘の報告をしつつ向こうの浮気を調べてほしい」とお願いされるが……(『奇妙な依頼』)

 

現院長&次期院長を約束された身である横住と石津が殺される。何者かに脅しを受けていた形跡があることから、医療ミスによる怨恨殺人ではないかと疑われるが……(『夜よ鼠たちのために』)

 

クラブに勤める牧子、業績のために中年女性と寝る銀行員・鉄男、莫大な財産を持つ修平、修平と共に豪邸で暮らす静子。4人の思いが交錯する中、牧子は鉄男にとある殺人計画を持ちかける。(『二重生活』)

 

今をときめく人気俳優・支倉は妻・撩子のために自分とそっくりな顔を持つ男を探していた。やっと条件にぴったりな人物を見つけるが、その男を雇ってから次第に支倉の周りがおかしくなっていき……(『代役』)

 

無実の罪で6年間収監されていた主人公は、かつて自分を陥れた恋人・恭子と舎弟・征二を殺そうといきり立つ。しかし事件にはまだ隠された事実があった。(『ベイ・シティに死す』)

 

落ちこぼれ高校の新米教師である麻沙は、不良たちからマザーと呼ばれ慕われていた。ある日、素行不良で退学となった不良グループから「大変なことになった」と電話がかかってくる。(『ひらかれた闇』)

 

 

 

 

 

 

 

 

面白かったー!短編集なのにひとつ読み終わるたびに長編ミステリを読破したときのような達成感に襲われました。

 

奇妙な依頼と代役が好きです。特に代役。足癖が主人公のものだったという一文にぞわっとした。

ていうか入れ替わりネタ多いな?叙述にしても反則アウトな描写が多かった気がします。もうちょっと「騙された!」っていう爽快感が欲しかった。

ひらかれた闇が人気ないみたいだけど青春ミステリっぽくて私はわりと好き。マザーかわいい。

 

 

 

 

『仄暗い水の底から』鈴木光司

 

 

あらすじ:幼い娘・郁子と2人でマンションに引っ越してきた淑美。ある日屋上で真新しいキティちゃんのバッグを見つけるのだが……(『浮遊する水』)

 

教師の謙介は恩師・佐々木に誘われて第六台場の調査に向かう。そこはかつて謙介の親友・敏弘が恋人を捨ててきたと自慢していた場所でもあった。(『孤島』)

 

マグロ漁船に乗る和男は海上で無人のクルーザーを発見する。乗組員を代表してクルーザーに乗り込んだ和男だが、不審な航海日記を発見し……(『漂流船』)

 

気性の荒い漁師・裕之は行方不明になった妻・奈々子の死体を自身の漁船のいけすの中から発見する。自分が殺したことを思い出し、海上でどうにか隠蔽しようとするが……(『穴ぐら』)

 

牛島はヨットの上でセールスマン夫妻のしつこい勧誘を受けていた。陸が近づいてきてほっとしたのもつかの間、ヨットが何かに引っかかり停止してしまう。(『夢の島クルーズ』)

 

劇団『海臨丸』の舞台稽古中、上の階から水が滴り落ちてきた。音響係・神谷は監督の指示で上階の女子トイレを確認しに向かうのだが……(『ウォーター・カラー』)

 

探検を趣味とする杉山は友人・榊原と共に未知の鍾乳洞を発見する。ところが不慮の事故により榊原が死亡、通ってきた道は榊原の巨体と岩により塞がれてしまい……(『海に沈む森』)

 

 

 

 

 

初めて読むはずなんですがなぜか夢の島クルーズだけデジャヴを感じました。これだけどこかで読んだことあるのかな?

 

個人的には漂流船が好きです。こういう直接的には描写しないものの容易にバッドエンドが想像できる終わり方大好き。

『浮遊する水』も幽霊抜きでぞっとする真相で良かったです……

 

『ディリュージョン社の提供でお送りします』はやみねかおる

 

 

あらすじ:登場人物になりきり、物語の世界をリアルに体験することができる『メタブック』。本を一切読まない森永美月は、ひょんなことからその『メタブック』を提供するディリュージョン社に就職してしまった。

今回の依頼人・佐々木のオーダーは「不可能犯罪のミステリ小説」。新人である森永は天才シナリオライター・手塚と共に舞台を整えるが、予定にない犯罪予告や殺人未遂事件が相次いで起きてしまう。

メタブック内に本物の殺人鬼が紛れ込んでいる……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はやみね先生の新シリーズ!わーい!

 

ミステリあるあるがふんだんに織り込まれていて推理小説オタクとしては非常に面白かったです。名探偵の掟みたいな。ちょうどこの前「まだらの紐」を読んだばかりなのでなんだか嬉しくなりました。

私のような活字中毒からしたら美月ちゃんが異常者すぎる……

 

森永美月といえばマチトムですが、結局彼女は何者なんでしょうか……?もしや未来の内人の娘……??めちゃくちゃ気になるから早く2巻読みたい。

マチトム読者なら思わずにやけてしまうくらい美月ちゃんが内人でした。内人もいずれ就活で苦しむんだろうな。

 

 

ひらがな名義なのに人が死ぬの!?とハラハラしてましたが杞憂でしたね。

個人的には美月が真相に辿り着くのがちょっと唐突かな?って思いましたが、それを差し引いても十分面白かったです。

はやみね先生本当に好きです〜……

 

『葉桜の季節に君を想うということ』歌野晶午

 

 

あらすじ:性に奔放な男、成瀬将虎は地下鉄への飛び込み自殺を図っていた女性・麻宮さくらを助ける。セックスだけの仲だった今までの女たちとは違い、さくらの内面に惹かれていく将虎。やがてふたりはデートを重ねるようになる。

時を同じくして、将虎は超お嬢様の久高愛子に『身内の死の真相を調べてほしい』と依頼される。先日轢き逃げで死亡した久高隆一郎が保険金のために殺害された可能性があるというのだ。将虎はさくらとのデートと並行して調査を進めるが……

 

 

※ネタバレです!↓

 

 

 

 

 

 

 

 

日本の叙述トリックといえば『向日葵の咲かない夏』『殺戮にいたる病』『イニシエーション・ラブ』あたりに並んでメジャーなこの作品。

叙述だと知りつつ読んだのに華麗に騙されましたね……ミステリというよりアクション?娯楽小説?って感じです。

 

さくらが蓬莱倶楽部の人間であることは早い段階で見抜けるんですが(初デートで蓬莱倶楽部の名を出した瞬間に狼狽えた)まさか節子=さくらだなんて予想だにしませんでした。売春する70代が想像できない……

真相をぼかして描写するのではなく反則ぎりぎりの言い回しをするところがちょっとアンフェアな気も。現役高校生とか引っかかるに決まってんでしょ!?

 

「無職の綾乃はどこから遊ぶ金を捻出してるんだろう?」とか「掃除夫のおじさんがいきなり若い人に代わってたら不審に思われないか?」とかいろいろ引っかかるとこはあったんですけどね。

あまりに綺麗に騙されると逆に爽快感を覚えるものですけど、本作は「え……?まじで……?」がじわじわ襲ってくる感じです。

 

面白かったですが、個人的には同じ歌野晶午さんの『絶望ノート』の方が好みかな。

 

『悪魔の手毬唄』横溝正史

 

 

あらすじ:名探偵・金田一耕助が静養のため訪れた鬼首村は、23年前に謎多き殺人事件が起こった曰く付きの村だった。

村出身の大人気歌手・大空ゆかりの帰省で湧く鬼首村。そんな中で村の庄屋が姿を消し、やがて手毬唄になぞらえた連続見立て殺人が起きていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小学生の時に金田一は制覇したはずなんですけど、完っっっ全に中身忘れたのでまた読んじゃいました。

有名な見立て殺人といえば『そして誰もいなくなった』と共にこの本が挙げられますよね。ベタだけどやっぱ見立てはテンション上がります。

 

 

キャラが多い上に人間関係が複雑なので途中何度か混乱しました。家系図ぐちゃぐちゃすぎんよ……

正直リカもそこまで強い印象がなくて、真相が明かされてもあまり驚きがなかった。へーそうなんだ……みたいな。

『閉じられた世界での近親相姦』ってシチュはすごーーーーーーーく性癖なんですけどね!

田舎の封建的な恐ろしさは痛いほど伝わってきた。

 

 

(金田一のコミュ障っぷりが絶妙にキモくて好き)

 

『笑うな』筒井康隆

 

 

 

あらすじ:タイムマシンを発明したという友人に付き合う表題作。帰宅すると警官が妻を強姦しているところに鉢合わせた『傷ついたのは誰の心』。明治時代の宮内庁に電話が繋がってしまう『最初の混線』。超短編34編が詰め込まれたショートショート集。

 

 

 

 

 

 

『遠泳』『夫婦』『ブルドッグ』『タック健在なりや』あたりが好きです。シンプルながらも後味がすごい。

あと『産気』は笑った。オメガバースかな?

 

『殺戮にいたる病』我孫子武丸

 

 

あらすじ:"真実の愛"と称し、自分の気に入った女性を次々に惨殺していく蒲生稔。

親しい女性が被害者となったのをきっかけに、彼女の妹と共に調査を開始する樋口。

自分の息子が猟奇殺人犯ではないかと疑う母・雅子。

三者の視点が集結するとき、連続殺人事件の真相が明らかとなる。

 

ネタバレだよ!↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一応あらすじは毎回考えて自分なりにまとめてるんですけど、この話をまとめるのめちゃくちゃ難しいですね。

叙述の定番として名高いこの作品。叙述なのは知ってたのでかなり気をつけながら読んだのですが完っっっっ全に騙されました。

 

 

とにかくエログロがすごい。性器を切り取ってオナホにするとか常人の発想ではない。

一見エロはそこまでないような気がしますが、ショタが実の母親にクンニしようとしてるところを想像すると生々しくて駄目です。生理的な嫌悪感というか……不快なエロを描くのがすごく上手い……

 

 

読み終わったとき理解ができなくてしばらく固まってました。

稔のサイコっぷりは非現実的なのでフィクションとして受け入れられるんですが、雅子の気持ち悪さがすごくリアルでなんとも言えない不快さがあった。この両親の下で健全に育った信一と愛はすごいよ……

 

これは2回読むべきですね。

でんぱ組のみりんちゃんが「稔は狛枝みたいな外見イメージ」って言ってたから私もそれで脳内再生しよう。

あと我孫子さんってかまいたちの人なんですね!かまいたちもずっとやりたいなと思ってるんだよなー……

 

 

「生きるに値しない世界で、生きるに値しない人間が生き延びている」ってフレーズすごく好き。