Kosuna's Bookshelf

読んだ本のメモとちょっとした感想。当方腐女子ですのでそういった発言を含みます

『ユダの窓』カーター・ディクスン

 

あらすじ:裕福な青年・アンズウェルは、メアリーという女性と愛し合っていた。結婚の許しを得るため彼女の父とふたりきりで話し合うことになったアンズウェルだが、彼に勧められるまま飲み物を口にしたところ気を失ってしまい、目を覚ますとなんと目の前に将来の義父の死体が転がっていた!

ロンドン中央刑事裁判所で殺人の容疑に問われるアンズウェル。現場が密室だったこともあり、誰もが彼の有罪を信じて疑わない。そこで被告人側の弁護士・メリヴェール卿が立ち上がる。

 

 

 

 

かの有名なディクスンカーの作品ですね。トリック自体は正直「ああそんなものか」と思うんですが、そこに至るまでの魅せ方が本当に素晴らしい……

この前クリアした大逆転裁判を思い出しました。あれも舞台オールドベイリーだしね。

基本的に裁判シーンが大部分を占めていて証人と判事や弁護士たちの舌戦で真実が明らかになっていくので、まるで自分も傍聴人のひとりになっているかのような感覚を味わえます。プロローグが『起こったかもしれないこと』、本文が『起こったらしいこと』、エピローグが『ほんとうに起こったこと』って章題なのが良い。

これもわりとさくさく読めたな〜!読みやすかった!メリヴェールがかっこいいです。私は全然真相が予想できなかったんですけどそれでもメリヴェールなら何とかしてくれそうだという謎の信頼感がありました。

ガラスのドアの失言のくだりは自分も覚えてたのでめちゃくちゃ興奮しました。こういう本人が気づいてない失言とか矛盾を指摘するシーンいいよね……脳汁出るよね……

『脳男』首藤瓜於

 

あらすじ:連続爆弾魔のアジトで犯人と一緒にいるところを捕らえられた男・鈴木一郎。頑なに過去について語ろうとしない鈴木の精神鑑定を任された医師・真梨子が独自に調べ上げたところ、とある仮説に行き着く。彼を逮捕した張本人・茶屋と共にその仮説を突き詰めていくのだが、ある日鈴木の入院先の病院に爆弾が仕掛けられ……

 

 

 

 

面白かった!ページめくる手が止まらなかった!

『生まれつき感情が存在しないけれど周囲の様子を見て学習したことで周囲から違和感を覚えられない程度にはハリボテの感情表現を行うことができる美少年』とかいう厨二にはたまらん設定。ボロが出たことに自分では一切気づけないのエモすぎる。

落ち着いた女医とせっかちな刑事がタッグ組んでるのちょっと海外ドラマっぽくない?全然違うけど検屍官シリーズ思い出しました。台詞回しも演劇めいた言葉遣いがちょくちょくあった気がする。

だんだん鈴木の中身が明らかになっていってると思いきや最後の最後でまた謎めいた存在に戻るの好きです。ラスト切ないけどモヤるな〜と思いきや続編あるんですね。そのうち読んでみたい。

『地下室の箱』ジャック・ケッチャム

 

あらすじ:妻子ある男の子供を身ごもってしまったサラ。堕胎のために産婦人科を訪れようとしたところ、謎の男女2人組にさらわれてしまう。目を覚ましたのは地下室にある得体の知れない箱の中で……?

 

 

 

 

 

妊婦を監禁・暴行すると聞くと普通かなりエグいものを想像すると思いますし私もそれを期待してたんですが、正直拍子抜けでした。ケッチャムにしてはぬるいですよねこれ。

隣の家の少女のような胸糞悪さもないですし、オフシーズンのようなストレートなグロ描写も皆無です。手術器具を見つけるくだりは良かったですが。まあぶっちゃけて言うとかなりつまらなかったです。さくさく読めるので暇つぶしにはいいかも?

監禁犯の夫婦の妻の方がサラに対して嫉妬を通り越してレズビアン的な感情に目覚めるところはすごく好きでした。歪で良い。

 

全体的にいまいちだなーと思ってましたがラストだけはぞわっとしたよね……

臨月まで監禁されていたサラは結局堕胎できずに出産するのですが、その子供にメグと名付け、監禁中に心の支えになってくれていた猫にはルースと名付けるんです。そう、隣の家の少女に出てくるあの名前です。

これを知ったときの絶望感だけでも読んだ甲斐はあったなと思います。

 

『屍人荘の殺人』今村昌弘

 

あらすじ:大学のミステリ愛好家のメンバーである明智恭介と葉村譲は、”探偵少女”と呼ばれる剣崎比留子と共に映画研究部の夏合宿へと参加を決める。その合宿は事前に開催中止を求める脅迫状が届いていた曰くつきのものだった。

どこかひりついた空気を残しながらも、BBQや肝試しといった定番イベントを楽しんでいく面々。しかし肝試しの最中、誰も予想だにしなかったとんでもない事態によってメンバーはペンションへの立てこもりを余儀なくされ……

 

※ネタバレです!↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明智恭介のこと以外何も考えられねえ…………………………

冒頭のほのぼのシーンを読んだら誰もが「明智が探偵ポジで葉村はそれに振り回される助手役なんだろうな」って思うじゃん?ミステリ慣れしてる人ほどそう感じるよね。そんな先入観を根本からひっくり返してくる展開にただただ脱帽。

言ってしまえば明智の死って事件の本筋には全く関係ないしメタ的には『不必要な死』なんですよね。それでもただ単に盛り上げるための舞台装置として組み込んじゃう作者の意地の悪さがすごいと思うよ。(めちゃくちゃ褒めてます)

『俺のホームズ』って一文エモすぎる……ゾンビ明智のシーンをライヘンバッハになぞらえてるのも無理。蘇ったホームズを崖下に突き落とせないワトソン……

ラスト数ページまで明智はなんらかの方法で生きていると信じて疑ってなかったんですよ。たとえば撮影場所だった廃墟でたまたま犯人グループの使ってた解毒剤の注射器が指にちくりとしちゃってたとか、まあなんかそんな感じの。だってあんなあっさり死ぬとか信じたくないじゃんんんん…………

下松さんもめっちゃ好きだったので悲しい。大槻唯ちゃんのビジュアルで脳内再生してた。

 

閑話休題

大学のミステリ愛好会、夏合宿、名探偵の美少女、クローズド・サークル。これでもかとばかりベタベタな要素を詰め込んでるかと思いきやあまりに斬新すぎるクローズドサークルで絶句しました。前情報なしで読んでたので本当に度肝抜かれた。ゾンビと殺人鬼の両方に怯えなきゃいけないとか死んでも御免だ……

何が面白いってゾンビがただクローズドサークルを形成するための道具ではなく事件にがっつり絡んできてるってことですよね。雪とか嵐とかが原因のものだとこうはいかない。エレベーターのトリックすっごい良かったな……

 

逆にちょっと「あれ?」って思ったのは動機の弱さなんだけど、静原さんは昔から沙知先輩のことが恋愛的な意味で好きだったのかなって考えたら納得できました。手足縛ったままゾンビの群れの中に放り出すって最高の復讐だな。私は途中まで葉村が多重人格者でその別人格が犯人じゃないかなと思ってました(葉村の震災のトラウマに何か秘密があるんじゃないかと……)

あと機関の伏線が全く回収されなくてええーーーー!?ってなったけどまあこれ絶対続編出るやつだもんな。比留子と葉村ペアでシリーズ化すんのかな……どうにかして明智さん復帰しねえかな……(諦めきれない)

もしくじ引きで4番目以降を引いてたら、もしペアがおとなしい静原さんじゃなく、たとえば男勝りな高木さんだったら。より早くペンションに引き返すことができるからおそらく彼は助かっていた。もっと遡って、明智と葉村が出会ってなかったら。助手という存在に比留子が思い至ることもなく、彼らはペンションに行くこともなかった。IFを挙げればキリがない。もう取り返しはつかないけれど。

個人的に面白いなって思ったのが名前とキャラクターの関連付けですね。最初の人物紹介ページに頻繁に戻っちゃうのあるある。

 

本当に面白かったし各所で絶賛されてるのも納得の出来なんだけれども、それはそれとして明智がしんどいのでもう二度と読みたくねえ!

『プリズム』貫井徳郎

 

あらすじ:優しく美人で人気者の女性教師が自宅で死体となって発見された。頭部への一撃による即死と見られ、窓にはガラス切りで侵入された跡、部屋にあったチョコレートには睡眠薬が。そこでチョコレートを贈った同僚の男性教師が疑われるのだが……

 

 

 

最近増えてきたような気がする、ひとつの事件がそれぞれの登場人物の視点から語られるタイプの小説です。個人的にこのタイプはかなり好きなんですよね。ひとつ前の章で犯人が確定したかと思えば、次の章ではその本人の視点に変わってその人が犯人ではないと明かされる。この繰り返しがやっぱり王道ながら面白いです。

 

ですが、今作の異様なところはその繰り返しのまま最後のページに辿り着いてしまうところ。結局客観的な真相が何ひとつ明かされないのです。登場人物たちはそれぞれ違った人に犯人の目星を付けているのですが、彼らの視点をすべて見てきた私たち読者はそれらが間違っていることを知っています。登場人物たちは良くとも、私たちは中途半端に真相を知っているがゆえに全くスッキリしないんです。

ここがたまらなく好きな人もいるんでしょうが、私にはどうしても合いませんでした。探偵の「犯人はあなたです」にカタルシスを感じるタイプの人はみんなそうなんじゃないかなーと思います。もやもやしてしょうがないです。結局誰が犯人なん……?

 

自分なりに考えてみたんですが、まず少なくとも作中で一人称視点が明かされる小宮山くん、桜井先生、井筒、小宮山くんの父親の4人はシロ(直接手を下していない)だと思います。山名さんも怪しい。でもそれ以上は正直材料がなさすぎる。言ってしまえば女性配達員がもともと山浦先生に面識がある人で彼女に学生時代の恨みがあったために押し入って殺した……とかの可能性もゼロじゃないわけですし。クローズドサークルならともかく犯人の範囲が広すぎます。そこがまた私に合わなかった要因のひとつなのかなーと。

 

過程はすごく面白かっただけに誰か納得できる真相を教えてくれ……

『老人と犬』ジャック・ケッチャム

 

あらすじ:老いた愛犬と一緒に釣りを楽しんでいる老人、ラドロウ。そこにショットガンを持った3人の少年が近づき金銭の要求をするが、ラドロウが大した金額を持っていないことを知ると犬をショットガンで撃ち抜いてしまった。笑いながらその場を去る少年たち。愛犬の亡骸を抱き、ラドロウは然るべき報いを与えることを決意するが……

 

 

 

わたし、犬や猫をはじめとして動物が痛い目に遭う話が本当〜〜〜〜に無理なんですよね。人がばこすか死ぬ話ならケラケラ笑いながら見れるのでおかしい話なんですけど。

この犬は亡き妻から10数年前に誕生日プレゼントとして贈られた犬で、さらにその妻の死には壮絶な悲しい事情があって……というのが明かされる過程で泣きそうになってしまいました。

てっきりラドロウは自分の死と引き換えに復讐を果たしたもんだと思ってたのでいや生きてんの!?!?!ってなりましたよね。よかったよかった。でも復讐を完遂してもスッキリ爽やかめでたしめでたし☆とはならないのがこのお話の深さ。復讐とは得てしてそんなもんですよね。

ラドロウ長生きしてほしいなあ……あと10年は生きて子犬がレッドくらいの歳になるまで見守っててほしい……

 

これセックス描写いるか???って思ったのは秘密。

 

『隣の家の少女』ジャック・ケッチャム

 

 

あらすじ:子供が多い住宅街に、両親を亡くした美しい少女・メグとその妹・スーザンが引っ越してきた。隣家に住む少年・デイヴィッドはその美しさに心を奪われるが、姉妹の叔母であり唯一の保護者であるルースはメグに冷たく当たっていた。

ルースからメグへの虐待は次第にエスカレートしていき、ついに彼女は地下室にて監禁されてしまう。ルースの子供たちやデイヴィッドの友達まで虐待に嬉々として参加するようになるが、デイヴィッドは止めることができず……

 

 

 

 

 

 下書きに置いたままなぜか放置してました。多分実際に読んだのは半年前くらい。

 

今まで読んできた中でトップレベルに不快な小説でした。

「苦痛とはなにか、知っているつもりになっていないだろうか?」というデイヴィッドの独白から始まり、ひたすら不快な展開が続くこの小説。読みながら「これ以上読みたくない」と思った作品は初めてです。

最終的にメグは性器をバーナーで焼かれるんですが、そこを除けばそこまでグロテスクな描写はありません。ないんですが、精神的にクるものがあります。読めばわかります。

何の罪もない少女への一方的な暴力。何よりつらいのはこれが実話を基にした物語であることです。日本にも女子高生コンクリ事件など吐き気を催すような事件はいくつかありますが、人間というのはここまで残酷になれるものなのかと……

 

一度は読んでみるべきだと思います。どんな綺麗な言葉よりもわたしの中に深く影響を与えた一冊です。