こすなの読んだもの

読んだ本の備忘録

『儚い羊たちの祝宴』米澤穂信



あらすじ:幼い頃から丹山家の令嬢・吹子に仕える夕日。吹子に勧められた本を次々に読み、読書の面白さの虜になるのだが……?(『身内に不幸がありまして』)

大富豪の男とその愛人の間に生まれたあまり。貧しかった母の死をきっかけに父の館に住もうとするが、妾の子として離れに住む男の世話をすることを命じられ……(『北の館の罪人』)

優秀な使用人である屋島は美しい別荘・飛鶏館の管理を任せられる。自分の技術に自信を持っている屋島だが、飛鶏館が使用されないことに不満を抱き始め……(『山荘秘聞』)

名家・小栗家の一人娘である純香は厳しい祖母にうんざりする毎日を送っていた。ところがある日、同い年の使用人・五十鈴を与えてもらったことで毎日が楽しく変わり始める。(『玉野五十鈴の誉れ』)

成金である鞠絵の父は「厨娘」と呼ばれる一流の料理人・夏さんを雇う。おいしさは確かに一流なのだが、材料や作り方に不可解な点がいくつかあり……(『儚い羊たちの晩餐』)









※ネタバレしてます!↓










すごかった……わたしこういうラスト一行で衝撃が走る小説大好きなんですよ……
一番好きなのは玉野五十鈴の〜です。ぞわーっとした。五十鈴ちゃんの仕事人っぷりに東条斬美さんを重ねてしまった。



・身内に不幸がありまして
フーダニットは登場人物が少ないせいもあって簡単なんですが、夕日ちゃんまで殺しちゃうのは……お前……
「愛でなくて忠誠だったら〜」の一文で唸りました。報われない主従百合。
完璧超人なお嬢様なのに倫理観だけが決定的に欠けてるのキャラ造形としてすごく好きです。吹子だけは夏さんから逃れられたのか……




・北の館の罪人
元美術部のくせに絵の材料であることに気づかなくてめちゃくちゃ衝撃でした。犯人も衝撃。
詠子ちゃんがいいキャラしてて好きなんですけどラストのあの台詞は犯行に気づいてますよね……?でも冒頭ではあまりの絵は別館に飾られている(=紫になりにくい)わけで。詠子ちゃんも殺された……?
髪の毛を塗り込めたのもわざとなんだろうな。毒に気づきつつもあえて死を享受した早太郎さんの気持ちを考えると……




・山荘秘聞
アホなのでてっきり殺したもんだと思ってました。レンガとかで殴ったのかと……よく読んだら札束だったんですね……
完全にミスリードされました。珍しい肉とか引っかかるに決まってんじゃん!!
口約束は信用しないから前もって金を払うって言ってたもんな。





・玉野五十鈴の誉れ
濃厚な主従百合その2。ありがとう世界。
微笑ましいなあかわいいなあ→ファッ!?→つらい→マジか……って気分が浮き沈みしまくった。ババアざまあ!!!
「助けて、五十鈴」に五十鈴は返事をしていてくれたんだと思います。純香がハピエンを迎えてくれてよかったですが、次のエピソードでハピエンもクソもなくなることになる。





・儚い羊たちの晩餐
これまでに出てきたお嬢様全員が所属している大学サークル『バベルの会』。そこから除名された鞠絵が夏さんを通じて会長に復讐を企てようとするも、夏さんの料理法を知らなかったがために予想外のオチに繋がるお話。
無知なのでアミルスタン羊はただの羊だと思っていたのですが、途中でなんかおかしいぞと思いメデューズ号の筏で気づきました。
もし夏さんが父の前で調理する許可をもらってたら唇切断ショーを見せられたんでしょうか……どちらにせよこの家の浪費癖だと近いうちに没落しそうですね。




2chでよく推されてるので読んだのですが本当に面白かった。後味は悪いものの妙な爽快感がありました。
元ネタを理解するためにももっと学を深めなければ……