こすなの読んだもの

読んだ本の備忘録

『プリズム』貫井徳郎

 

あらすじ:優しく美人で人気者の女性教師が自宅で死体となって発見された。頭部への一撃による即死と見られ、窓にはガラス切りで侵入された跡、部屋にあったチョコレートには睡眠薬が。そこでチョコレートを贈った同僚の男性教師が疑われるのだが……

 

 

 

最近増えてきたような気がする、ひとつの事件がそれぞれの登場人物の視点から語られるタイプの小説です。個人的にこのタイプはかなり好きなんですよね。ひとつ前の章で犯人が確定したかと思えば、次の章ではその本人の視点に変わってその人が犯人ではないと明かされる。この繰り返しがやっぱり王道ながら面白いです。

 

ですが、今作の異様なところはその繰り返しのまま最後のページに辿り着いてしまうところ。結局客観的な真相が何ひとつ明かされないのです。登場人物たちはそれぞれ違った人に犯人の目星を付けているのですが、彼らの視点をすべて見てきた私たち読者はそれらが間違っていることを知っています。登場人物たちは良くとも、私たちは中途半端に真相を知っているがゆえに全くスッキリしないんです。

ここがたまらなく好きな人もいるんでしょうが、私にはどうしても合いませんでした。探偵の「犯人はあなたです」にカタルシスを感じるタイプの人はみんなそうなんじゃないかなーと思います。もやもやしてしょうがないです。結局誰が犯人なん……?

 

自分なりに考えてみたんですが、まず少なくとも作中で一人称視点が明かされる小宮山くん、桜井先生、井筒、小宮山くんの父親の4人はシロ(直接手を下していない)だと思います。山名さんも怪しい。でもそれ以上は正直材料がなさすぎる。言ってしまえば女性配達員がもともと山浦先生に面識がある人で彼女に学生時代の恨みがあったために押し入って殺した……とかの可能性もゼロじゃないわけですし。クローズドサークルならともかく犯人の範囲が広すぎます。そこがまた私に合わなかった要因のひとつなのかなーと。

 

過程はすごく面白かっただけに誰か納得できる真相を教えてくれ……