こすなの読んだもの

読んだ本の備忘録

『葉桜の季節に君を想うということ』歌野晶午

 

 

あらすじ:性に奔放な男、成瀬将虎は地下鉄への飛び込み自殺を図っていた女性・麻宮さくらを助ける。セックスだけの仲だった今までの女たちとは違い、さくらの内面に惹かれていく将虎。やがてふたりはデートを重ねるようになる。

時を同じくして、将虎は超お嬢様の久高愛子に『身内の死の真相を調べてほしい』と依頼される。先日轢き逃げで死亡した久高隆一郎が保険金のために殺害された可能性があるというのだ。将虎はさくらとのデートと並行して調査を進めるが……

 

 

※ネタバレです!↓

 

 

 

 

 

 

 

 

日本の叙述トリックといえば『向日葵の咲かない夏』『殺戮にいたる病』『イニシエーション・ラブ』あたりに並んでメジャーなこの作品。

叙述だと知りつつ読んだのに華麗に騙されましたね……ミステリというよりアクション?娯楽小説?って感じです。

 

さくらが蓬莱倶楽部の人間であることは早い段階で見抜けるんですが(初デートで蓬莱倶楽部の名を出した瞬間に狼狽えた)まさか節子=さくらだなんて予想だにしませんでした。売春する70代が想像できない……

真相をぼかして描写するのではなく反則ぎりぎりの言い回しをするところがちょっとアンフェアな気も。現役高校生とか引っかかるに決まってんでしょ!?

 

「無職の綾乃はどこから遊ぶ金を捻出してるんだろう?」とか「掃除夫のおじさんがいきなり若い人に代わってたら不審に思われないか?」とかいろいろ引っかかるとこはあったんですけどね。

あまりに綺麗に騙されると逆に爽快感を覚えるものですけど、本作は「え……?まじで……?」がじわじわ襲ってくる感じです。

 

面白かったですが、個人的には同じ歌野晶午さんの『絶望ノート』の方が好みかな。