こすなの読んだもの

読んだ本の備忘録

『暗黒女子』秋吉理香子

 

 

あらすじ:お嬢様ばかりが集うミッションスクール・聖母女子高等学校で、学園中の憧れの的である白石いつみが墜落死した。

文学サークルの会長を務め、圧倒的カリスマを誇る完璧美少女だったいつみ。サークルメンバーの誰かが犯人だと噂される中、いつみの親友・小百合は会長の座を引き継いで『闇鍋会』を主催する。闇鍋をしながらひとりひとりが自作の小説を朗読するというこのイベントで、メンバーはそれぞれ「いつみの死」をテーマにした小説を発表し合うのだが……

 

 

↓ネタバレあり!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一言で言うなら『闇のマリみて』。

前置きの時点で犯人はなんとなーく察せましたがまさかあのオチに繋がるとは……

 

 

まず二谷美礼の小説。美礼視点なのでかわいそうな美礼に同情し、彼女が告発する古賀園子を憎みたくなってしまいます。しかし次の小南あかねの小説に移ると一変、美礼が告発され悪者として描かれています。

この時点で既に面白かった!同じ事実でもどの人物の視点に立つかでこんなに変わるものかと。湊かなえの告白を思い出した。

 

 

 

……しかし、闇鍋会が進むにつれて各人の話す『事実』すら食い違ってきます。視点の違い・思い込みだけでは説明できない矛盾。誰かが意図的にフェイクを混ぜている……?

最後の番である高岡志夜に至ってはハッキリと「小南あかねがいつみを突き落とすのを見た」と証言します。この時点で私は全くオチが予想できませんでした。

(あとなぜか私は北条先生が女だと思ってました。なんで????)

 

 

誰もが認める学園一の美少女が教師に一目惚れね〜……

恐らく女子校マジックもあったと思うんですよね。初等部から女子校だったら年の近い男性と関わることってまず無いでしょうし。箱庭で育ったが故に異質なものに惹かれたのかもしれない。

 

 

放火や殺人未遂に比べたら美礼の援助交際だけ軽いなと思いましたが窃盗もほんとだったのかな?

一番可哀想なのはディアナ。いつみがブルガリアを選びさえしなければ彼女の人生は狂わずに済んだのに……

 

 

いつみの小説が終わった時点でどんでん返しは成立していますが、もう一度返されるのがこの小説の凄いところ。正直いつみの小説だけで終わってたらありきたりなラストだったと思います。

いつみは常に殿上人であるべきだったのに、男と幸せになったことで凡庸な女へと堕ちてしまったーー……だから殺した。

すごい。百合の極みですよこれ。必ずしも小百合に恋愛感情があるとは言えませんが概念として百合。美しき聖女が平凡な人間になるのが許せなかったと……

私も先日高校を卒業したんですが、女子高生の肩書きがあるうちに死にたいなとよく思ってたのでいつみの気持ちはよーーーーくわかります。女子高生ってやっぱり神聖で特別で、制服は限りある美の象徴で、ミッションスクールだったらその傾向は尚更強いと思います。

 

 

 

そして極めつけの腕時計。いつみが嵌めていた腕時計が鍋の中にあり、デザートの名前は『ヴィーナスの腕』……

……じゃあ、今まで食べていた闇鍋の中身は?

 

 

 

 

 

 

 

 

うーん面白かったです。読み直したらまた新しい発見がありそうですね。

映画も観に行きたいなあ。