こすなの読んだもの

読んだ本の備忘録

『オフシーズン』ジャック・ケッチャム

あらすじ:都会に住む編集者の女性・カーラは自身の彼氏、自身の元彼とその今カノ、妹とその彼氏の計6人で避暑地にある別荘へやってきた。カップル3組ということもあり夜は各々ベッドで楽しもうとするが、その最中に突然大人数の襲撃を受ける。なんとそれは洞窟に昔から隠れ住む残虐な食人族たちで……

 

 

 

ケッチャムは『隣の家の少女』が個人的にいろんな意味で衝撃だったので読んでみましたが、あっちが陰鬱でじわじわとくるエグさなのに対してこれはスカッとするスプラッタ映画系のグロって感じです。まあオチはかなり胸糞なんですけど……

 

ネタバレしてしまうと、カーラの妹とカーラにまだ未練を残していた元彼だけが生き残って最後まで戦うんですよね。そして異変を知った警察が彼らのいる食人族の洞窟まで辿り着くんですが、洞窟に行く途中で逃げ出した食人族たちと鉢合わせしてしまって、そこで警察の数人が食われてしまう。気が動転した警察はやっとのことで洞窟の入り口に着き、そこでボロボロになった元彼と遭遇する。元彼が助かったと思って駆け寄ろうとした瞬間、先ほどの出来事でパニック状態の警察は元彼を食人族の一味だと誤解して撃ち殺してしまう……

未練を残した元恋人を残虐極まりない方法で殺され、ひどい状態の遺体を見せつけられ、せめて攫われた元恋人の妹だけでも助けようと単身洞窟に乗り込んだ末のこの仕打ち。ここに至るまでの彼の奮闘をずっと追ってきてるのでなんかもうすごいの一言です。救いもクソもあったもんじゃねえ。結果的に生き残るのは妹ひとりというわけです。

 

でも個人的にそこまでキツいとは感じなかったかな……隣の家の少女の方が圧倒的に残虐描写は少ないのに精神的にキツかった……

前書きを途中まで読んでたらなんかネタバレが出てきそうな雰囲気になったので読み飛ばしたんですけど、どうやら正解だったみたいです。前書きにネタバレ入れるってどんな精神構造してんだよ!

 

ケッチャムのあとがきはめちゃくちゃ面白かった。「本当はもっとグロくしたかったのに編集者に止められた」「もっと救いのない展開にしたかった」「ハッピーエンドなんてクソ食らえ」的なことを延々と愚痴っててかわいいよ。

 

『クリムゾンの迷宮』貴志祐介

 

あらすじ:エリートサラリーマンから失業者に転落した男・藤木は、ある日とても地球上にあるとは思えないような異様な場所で目覚めた。手元にあるゲーム機を起動すると「火星へようこそ!ゲームは開始された」との文字。他の参加者と合流した藤木は、これがたったひとりだけが生き残って賞金を手にすることができるゼロサム・ゲームだと推測するが……

 

 

どきどきして夢中で読み進めましたが、肝心のオチがいまいち釈然としませんでした。デスゲーム系で一番大事なのはオチだと思ってるのでうーんといった感じ。でも過程は文句なしに面白かった!読んで損はないと思います。

藍はヤクの組織を壊滅させた報復としてヤバい組織に雇われ、その負債を身を以て返済するためにスナッフビデオのスタッフとして働かされてるのかなーと思ってました。デスゲーム系って「このゲームは外の世界に放送されている!」「俺たちは金持ちの見世物にされていたんだ!」的な真実がさも衝撃の事実のように扱われがちですけど、正直デスゲーム愛好家としては定番すぎてそりゃそうでしょ何驚いてんの?としか思わんのでどうにかしてほしいです。

倫理観が欠如してるのでカニバリズムのシーンよりも芋虫と生のカエル食うところの方が無理だった。食糧に隠された秘密はゾワっとしました。

『モンテ・クリスト伯(一)』アレクサンドル・デュマ(岩波文庫版)

 

あらすじ:優しく誠実で人望のある船乗り、エドモン・ダンテス。自身の勤める船の船長が急死したことから新しく船長への就任を命じられ、さらにメルセデスという美しい女性との結婚も控えておりまさに順風満帆の人生を送っていた。しかし彼をよく思わない男たちから無実の罪を着せられてしまい、孤島の監獄・シャトーディフへ収監されることになり……

 

 

 

名作だけあってすごく面白い。全7巻だそうですが1巻ラストでもう半分脱獄したみたいなもんなので残り6巻まるまる復讐パートなんだろうか……

カリギュラとネロが名前だけ出てきて嬉しかった。デュマもアンデルセンと同じでシェイクスピアの大ファンだとは知っていましたがこれを読んでるとモロに影響受けてるのがよくわかって面白かったです。

『慟哭』貫井徳郎

 

 

あらすじ:捜査一課長を務める佐伯は、キャリアと政略結婚の末に異例の若さで出世したことを周囲に疎まれていた。そんな中、ショッキングな幼女連続誘拐殺人が発生。同年代の娘を持つ佐伯は捜査本部を指揮するが、まったく犯人の尻尾が掴めず苦戦する。

一方、ひとり娘を失い人生を諦めた男・松本は救いを求めて新興宗教に傾倒していた。教会を通じて黒魔術を学んだ彼は、娘を蘇らせるために完璧な儀式を行うことを決意する。

 

ネタバレだよ!↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

完全に騙されました。丘本の台詞読んだ瞬間理解が追いつかなくて混乱した……

佐伯=松本であり時間軸が1年ずれていて、松本のターンで殺されていたのは奈緒美ちゃんたちじゃなかったと。こういう構成の話だと時間軸のミスリードは定番ですし警戒してたんですが、まあ見事に引っかかりましたね……

 

ラストが非常にやるせない。爽快感皆無です。が、そこがいい。

恵理子ちゃんやその他数人の幼女を殺した犯人は今ものうのうと生きていると……うわあ鬱だ……

 

個人的な感想を言うと美絵にイライラしっぱなしでした。自分が先に浮気してたくせにどのツラ下げて悲劇のヒロインぶってるんだ。

 

 

 

『乱れからくり』泡坂妻夫

 

 

あらすじ:ボクサーの夢を諦め職を探していた敏夫は、宇内舞子という女性のもとで探偵の真似事のような仕事をすることになる。記念すべき初仕事はおもちゃ会社の社長・馬割朋浩からの依頼で、妻・真棹の素行調査をしてほしいというものだった。

調査の末、真棹が朋浩のいとこ・宗児と関係を持っていると突き止めた敏夫。しかし尾行中に馬割夫妻が乗った車が隕石に直撃され、朋浩が帰らぬ人となってしまう。これをきっかけに敏夫は真棹に接近するが、次々と不可解な殺人事件が起きていき……

 

 

 

 

 

 

名作だけあって面白かった!おもちゃに関する雑学が散りばめられていて読んでて楽しかったです。こういう物語に関係ない知識は鬱陶しいと思う人も多そうですが。

トリックは全く見抜けませんでしたね。『乱れからくり』というタイトルが秀逸すぎる……涸れ井戸がカレイドスコープなのは瞬時に分かったんですがそれ以外はさっぱりでした。

 

たぶん誰にも共感してもらえないと思うんですけど、迷路の中で宗児が真棹にやったことに死ぬほど興奮しました。「迷路から出たいなら僕と関係を持つしかないよ?どうする?(意訳)」とか……こういう乙ゲーやりたい……(?)

 

てっきり宇内舞子シリーズがあると思ってたよ!これ1冊のみの登場にするには惜しいくらい良いキャラしてると思います。泡坂妻夫は亜愛一郎が最強だと思ってるんですがこれもなかなかでした。

 

 

『霊応ゲーム』パトリック・レドモンド

 

 

あらすじ:イギリスの名門パブリックスクールに通う14歳の少年・ジョナサン。気弱な性格が災いしていじめっ子や教師にいびられる毎日を送っていたが、それでも親友ニコラスに支えられて何とか日々を乗り越えていた。

しかしある日、ひょんなことからクラスの一匹狼・リチャードと親密になる。眉目秀麗、頭脳明晰、誰とも関わろうとせずいじめっ子からも一目置かれる彼と仲良くなれたことに舞い上がるジョナサン。ところが2人の仲が深まるにつれ、いじめっ子グループや2人を邪魔しようとする人物に災いが訪れるようになり……

 

 

 

 ネタバレ且つ腐発言しかないので注意

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぼくにとってこの世で大切な人はきみだけなんだ 。きみに手出しをしようなんてやつは、誰もいないさ。そんなことをしようとするやつは誰だって、このぼくが殺してやるからな。」

 

Twitterで「全腐女子読め」と推されていたのを見て興味が湧きました。読み終わった今なら言えます、腐女子読め。

ずるい、ずるいです。こんなん好きになるに決まってます……今まで読んできた一般小説の中でトップレベルに萌えました。「怒り」もやばかったけどあれ以上かもしれない。ヤンデレは最高……

 

 

 

ジョナサンとリチャードは言わずもがなですが、ジョナサンとニコラスとか双子とかスチュアート先生とポールとか魅力的なカップリングが多数出てくるんですよね。パブリックスクールものってあんまり読んだことないんですがすごく良かった。

特にジョナサンとニコラスはね……学生なら誰しも「自分の親友が他の人と仲良くしててムッとする」って経験したことあるんじゃないでしょうか。一種の同性愛的な感情なのかもわかりませんが、このニコラスの嫉妬にはかなり共感しました。パブリックスクールという閉鎖的な世界で生きてるなら尚更。

ジェームズがジョナサンをいじめる理由も良かった。自分もリチャードを仲間に引き入れたくて勧誘してるのに歯牙にも掛けてもらえなくて、でもなぜか自分より弱いジョナサンが気に入られてしまったと。それがムカつくと。うーん好きだ……マルフォイがロンをdisりまくってるのと同じような理由ですよね。

関係ないんですけどジョナサンがおしっこかけられるシーン大興奮でした。わあい小スカ!こすな小スカ大好き!

 

 

君は誰推し?ぼくはリチャード・レドモンドくん!

超絶美少年で教師を口で言い任せるほど頭が良くて束縛癖があり過去に闇を抱えている……こんなん私が推さないわけがない。

世界のすべてを疎んでいるような瞳をしているのにジョナサンに向けるときだけは違うんですよね。あの日あの時あの場所でラテン語の手助けをしなければ2人は真の意味で出会わないままだった。まあ『出会ってはいけない2人』だったわけですが……

もしニコラスの体調が良かったら。教科書を間違えなければ。リチャードが気まぐれを起こさなければ。IFを挙げればきりがなく、出会ってしまったのは運命だったとしか言いようがない。

 

リチャードは母親に対して「自分より弱い存在を守ることでその人に自分へと依存させる」ことをしていたわけで、でもその母親は最後にはリチャードの世界から抜け出してしまったわけで。だからジョナサンが自分から逃げようとすることにあんなに敏感だったんだろうなと思います。ジョナサンはリチャードにとっての第二の母親だったと……

共依存サイコ〜〜〜!!!!

 

 

腐女子の妄言なのでスルーしてほしいんですけど公衆の面前でいちゃつきすぎだろこいつら。肩抱いたり腕枕したりさあ!前半のリチャードがスパダリすぎてスタンディングオベーションだよ。

個人的に好きなのは、リチャードから独占欲のこもった視線を向けられたときのこの一文。

 

その強烈な視線にジョナサンは戦慄をおぼえたが、同時に興奮もした。

 

バカーーーー!!!!好きーーーーー!!!!!!(語彙力の死)

ここらへんが萌えのピークだったなあ。後半はどんどん辛い展開になっていくので……

あとはジョナサンが持ってるお父さんの時計をリチャードが嫉妬から破壊するシーンも好きです。ヤンホモ最高と言いたいところですがリチャードはその一言じゃ言い表せない気がする……うーん難しい。

誰ともつるまなくても平気な孤高の美少年だったのに、いざ隣に寄り添ってくれる相手ができたら執着全開になっちゃうっていうのがね。人間らしくて好きです。

 

推しが死ぬことに定評のある腐女子なのでリチャードも死ぬんだろうなあと思ってましたがまあ案の定でしたね。私が好きになったキャラは死ぬ運命。

個人的な好みとしては絞殺じゃなくて刺殺とか撲殺が良かったなーって……やっぱり死体って血で彩られてた方が映えますし。せっかく美少年なのに目玉と舌が飛び出た死に顔とかもったいないなあと(人の死にケチを付けるな)

いや首絞めシチュは興奮するんですけど!未遂がよかった!

双子の別れはオタク的に満点でした。双子じゃないからわからないんですけど、生まれたその日からずっと一緒に生きてきた自分の分身を失うってどんな気持ちなんでしょう……

スティーブが駆けつけるのが間に合い落ちてきたマイケルを抱きとめる展開だと思い込んでたんですが、まあそうは問屋が卸さないですよね。悲しい。

 

 

オチも面白かったなあ。ジョナサンとリチャードの物語にのめり込みすぎていて、これが全て回想であることをすっかり忘れてました。

「霊応ゲームはどんなものなのか」「何を呼び寄せるのか」といったことが具体的には何ひとつ明かされないのが恐ろしい……リチャードを殺した"物"は一体何だったのか。リチャードが見たのは何だったのか。

校長夫婦以外のメインキャラ全員がバッドエンド迎えてるのすげえよ。双子のご両親とか可哀想だよなあ〜〜……

 

 

BL小説としてはもちろん最高ですが、普通の読み物としてもめちゃくちゃ面白かったです。分厚いのもまた良い。

これはしばらく引きずってしまいそうだ……リチャジョナ幸せになってほしい……

 

 

 

 

『銀齢の果て』筒井康隆

 

 

あらすじ:老人人口が爆発的に増えた日本で、人口調節を目的とした『老人相互処刑制度(シルバー・バトル)』が導入される。宣告を受けた町に住む70代以上の人間は最後の1人になるまで殺し合わなければならず、期日を過ぎても複数生き残っていた場合は皆殺しにされてしまうのだ。

そして今回、隠居老人・宇谷九一郎もシルバーバトルへの参加を命じられる。強力な助っ人と銃を手に入れた九一郎だが、果たして彼は生き残ることが出来るのか?

 

 

 

 

 

 

 

一言で言うならお年寄り版バトロワ。これが書かれた当時はバトロワが大流行してたらしいですし完全に狙ってますよね。自身が70代になってからこれを書いた筒井康隆もすごい。

シルバーバトルの目的を考えればまあ当たり前なんですけど、勝ち残っても賞金や報酬の類がなにひとつ手に入らないのがやるせない。メリットがあるならまだやる気も出るってもんですけど……

ラストも何とも言えない。九一郎の気持ちを思うとただただ虚しかった。

 

デスゲームものの例に漏れずみんなキャラが立ってていいですよね!孫を犠牲にして生き残ろうとする夫を射殺した奥さんが好きです。あと執事さん。萌えを感じる。

そこらへんあんまり詳しくないんですが70代でも勃起ってするんですね……色仕掛けに引っかかって死ぬキャラがいるあたりは正統派バトロワ(?)っぽい。

入れ歯を取ったフェラってやっぱり気持ちいいんだろうか……

 

 

全力で"不謹慎"を突き詰めてて面白かったです。私はまだ10代で恐らくこれから数十年先も生きているのでしょうが、ラストの台詞に胸を突かれたようでした。私もいつかこんな気持ちになる日が来るのかな。