こすなの読んだもの

読んだ本の備忘録

『乱れからくり』泡坂妻夫

 

 

あらすじ:ボクサーの夢を諦め職を探していた敏夫は、宇内舞子という女性のもとで探偵の真似事のような仕事をすることになる。記念すべき初仕事はおもちゃ会社の社長・馬割朋浩からの依頼で、妻・真棹の素行調査をしてほしいというものだった。

調査の末、真棹が朋浩のいとこ・宗児と関係を持っていると突き止めた敏夫。しかし尾行中に馬割夫妻が乗った車が隕石に直撃され、朋浩が帰らぬ人となってしまう。これをきっかけに敏夫は真棹に接近するが、次々と不可解な殺人事件が起きていき……

 

 

 

 

 

 

名作だけあって面白かった!おもちゃに関する雑学が散りばめられていて読んでて楽しかったです。こういう物語に関係ない知識は鬱陶しいと思う人も多そうですが。

トリックは全く見抜けませんでしたね。『乱れからくり』というタイトルが秀逸すぎる……涸れ井戸がカレイドスコープなのは瞬時に分かったんですがそれ以外はさっぱりでした。

 

たぶん誰にも共感してもらえないと思うんですけど、迷路の中で宗児が真棹にやったことに死ぬほど興奮しました。「迷路から出たいなら僕と関係を持つしかないよ?どうする?(意訳)」とか……こういう乙ゲーやりたい……(?)

 

てっきり宇内舞子シリーズがあると思ってたよ!これ1冊のみの登場にするには惜しいくらい良いキャラしてると思います。泡坂妻夫は亜愛一郎が最強だと思ってるんですがこれもなかなかでした。

 

 

『霊応ゲーム』パトリック・レドモンド

 

 

あらすじ:イギリスの名門パブリックスクールに通う14歳の少年・ジョナサン。気弱な性格が災いしていじめっ子や教師にいびられる毎日を送っていたが、それでも親友ニコラスに支えられて何とか日々を乗り越えていた。

しかしある日、ひょんなことからクラスの一匹狼・リチャードと親密になる。眉目秀麗、頭脳明晰、誰とも関わろうとせずいじめっ子からも一目置かれる彼と仲良くなれたことに舞い上がるジョナサン。ところが2人の仲が深まるにつれ、いじめっ子グループや2人を邪魔しようとする人物に災いが訪れるようになり……

 

 

 

 ネタバレ且つ腐発言しかないので注意

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぼくにとってこの世で大切な人はきみだけなんだ 。きみに手出しをしようなんてやつは、誰もいないさ。そんなことをしようとするやつは誰だって、このぼくが殺してやるからな。」

 

Twitterで「全腐女子読め」と推されていたのを見て興味が湧きました。読み終わった今なら言えます、腐女子読め。

ずるい、ずるいです。こんなん好きになるに決まってます……今まで読んできた一般小説の中でトップレベルに萌えました。「怒り」もやばかったけどあれ以上かもしれない。ヤンデレは最高……

 

 

 

ジョナサンとリチャードは言わずもがなですが、ジョナサンとニコラスとか双子とかスチュアート先生とポールとか魅力的なカップリングが多数出てくるんですよね。パブリックスクールものってあんまり読んだことないんですがすごく良かった。

特にジョナサンとニコラスはね……学生なら誰しも「自分の親友が他の人と仲良くしててムッとする」って経験したことあるんじゃないでしょうか。一種の同性愛的な感情なのかもわかりませんが、このニコラスの嫉妬にはかなり共感しました。パブリックスクールという閉鎖的な世界で生きてるなら尚更。

ジェームズがジョナサンをいじめる理由も良かった。自分もリチャードを仲間に引き入れたくて勧誘してるのに歯牙にも掛けてもらえなくて、でもなぜか自分より弱いジョナサンが気に入られてしまったと。それがムカつくと。うーん好きだ……マルフォイがロンをdisりまくってるのと同じような理由ですよね。

関係ないんですけどジョナサンがおしっこかけられるシーン大興奮でした。わあい小スカ!こすな小スカ大好き!

 

 

君は誰推し?ぼくはリチャード・レドモンドくん!

超絶美少年で教師を口で言い任せるほど頭が良くて束縛癖があり過去に闇を抱えている……こんなん私が推さないわけがない。

世界のすべてを疎んでいるような瞳をしているのにジョナサンに向けるときだけは違うんですよね。あの日あの時あの場所でラテン語の手助けをしなければ2人は真の意味で出会わないままだった。まあ『出会ってはいけない2人』だったわけですが……

もしニコラスの体調が良かったら。教科書を間違えなければ。リチャードが気まぐれを起こさなければ。IFを挙げればきりがなく、出会ってしまったのは運命だったとしか言いようがない。

 

リチャードは母親に対して「自分より弱い存在を守ることでその人に自分へと依存させる」ことをしていたわけで、でもその母親は最後にはリチャードの世界から抜け出してしまったわけで。だからジョナサンが自分から逃げようとすることにあんなに敏感だったんだろうなと思います。ジョナサンはリチャードにとっての第二の母親だったと……

共依存サイコ〜〜〜!!!!

 

 

腐女子の妄言なのでスルーしてほしいんですけど公衆の面前でいちゃつきすぎだろこいつら。肩抱いたり腕枕したりさあ!前半のリチャードがスパダリすぎてスタンディングオベーションだよ。

個人的に好きなのは、リチャードから独占欲のこもった視線を向けられたときのこの一文。

 

その強烈な視線にジョナサンは戦慄をおぼえたが、同時に興奮もした。

 

バカーーーー!!!!好きーーーーー!!!!!!(語彙力の死)

ここらへんが萌えのピークだったなあ。後半はどんどん辛い展開になっていくので……

あとはジョナサンが持ってるお父さんの時計をリチャードが嫉妬から破壊するシーンも好きです。ヤンホモ最高と言いたいところですがリチャードはその一言じゃ言い表せない気がする……うーん難しい。

誰ともつるまなくても平気な孤高の美少年だったのに、いざ隣に寄り添ってくれる相手ができたら執着全開になっちゃうっていうのがね。人間らしくて好きです。

 

推しが死ぬことに定評のある腐女子なのでリチャードも死ぬんだろうなあと思ってましたがまあ案の定でしたね。私が好きになったキャラは死ぬ運命。

個人的な好みとしては絞殺じゃなくて刺殺とか撲殺が良かったなーって……やっぱり死体って血で彩られてた方が映えますし。せっかく美少年なのに目玉と舌が飛び出た死に顔とかもったいないなあと(人の死にケチを付けるな)

いや首絞めシチュは興奮するんですけど!未遂がよかった!

双子の別れはオタク的に満点でした。双子じゃないからわからないんですけど、生まれたその日からずっと一緒に生きてきた自分の分身を失うってどんな気持ちなんでしょう……

スティーブが駆けつけるのが間に合い落ちてきたマイケルを抱きとめる展開だと思い込んでたんですが、まあそうは問屋が卸さないですよね。悲しい。

 

 

オチも面白かったなあ。ジョナサンとリチャードの物語にのめり込みすぎていて、これが全て回想であることをすっかり忘れてました。

「霊応ゲームはどんなものなのか」「何を呼び寄せるのか」といったことが具体的には何ひとつ明かされないのが恐ろしい……リチャードを殺した"物"は一体何だったのか。リチャードが見たのは何だったのか。

校長夫婦以外のメインキャラ全員がバッドエンド迎えてるのすげえよ。双子のご両親とか可哀想だよなあ〜〜……

 

 

BL小説としてはもちろん最高ですが、普通の読み物としてもめちゃくちゃ面白かったです。分厚いのもまた良い。

これはしばらく引きずってしまいそうだ……リチャジョナ幸せになってほしい……

 

 

 

 

『銀齢の果て』筒井康隆

 

 

あらすじ:老人人口が爆発的に増えた日本で、人口調節を目的とした『老人相互処刑制度(シルバー・バトル)』が導入される。宣告を受けた町に住む70代以上の人間は最後の1人になるまで殺し合わなければならず、期日を過ぎても複数生き残っていた場合は皆殺しにされてしまうのだ。

そして今回、隠居老人・宇谷九一郎もシルバーバトルへの参加を命じられる。強力な助っ人と銃を手に入れた九一郎だが、果たして彼は生き残ることが出来るのか?

 

 

 

 

 

 

 

一言で言うならお年寄り版バトロワ。これが書かれた当時はバトロワが大流行してたらしいですし完全に狙ってますよね。自身が70代になってからこれを書いた筒井康隆もすごい。

シルバーバトルの目的を考えればまあ当たり前なんですけど、勝ち残っても賞金や報酬の類がなにひとつ手に入らないのがやるせない。メリットがあるならまだやる気も出るってもんですけど……

ラストも何とも言えない。九一郎の気持ちを思うとただただ虚しかった。

 

デスゲームものの例に漏れずみんなキャラが立ってていいですよね!孫を犠牲にして生き残ろうとする夫を射殺した奥さんが好きです。あと執事さん。萌えを感じる。

そこらへんあんまり詳しくないんですが70代でも勃起ってするんですね……色仕掛けに引っかかって死ぬキャラがいるあたりは正統派バトロワ(?)っぽい。

入れ歯を取ったフェラってやっぱり気持ちいいんだろうか……

 

 

全力で"不謹慎"を突き詰めてて面白かったです。私はまだ10代で恐らくこれから数十年先も生きているのでしょうが、ラストの台詞に胸を突かれたようでした。私もいつかこんな気持ちになる日が来るのかな。

 

『夜よ鼠たちのために』連城三紀彦

 

 

あらすじ:ある夜、画家の真木祐介のもとに新宿のホテルで妻の死体が発見されたとの報せが入る。しかし真木は先ほど自分の手で妻を殺し庭に埋めたばかりだった。(『二つの顔』)

 

仕事を辞め田舎に帰った若い刑事からかつての上司・岩さんに手紙が届けられる。それには退職を決意するきっかけとなったとある誘拐事件の真相について綴られていた。(『過去からの声』)

 

アパートの管理人であるサワは、父と2人暮らしをする車椅子の少女・千鶴が意識を失っているのを目撃する。どうやら首を絞められたらしいが千鶴は犯人について頑なに喋ろうとせず……(『化石の鍵』)

 

興信所に勤める男・品田は土屋という依頼人から妻・沙矢子の浮気調査を依頼される。尾行調査を続けるうち沙矢子に存在がばれ、「夫に嘘の報告をしつつ向こうの浮気を調べてほしい」とお願いされるが……(『奇妙な依頼』)

 

現院長&次期院長を約束された身である横住と石津が殺される。何者かに脅しを受けていた形跡があることから、医療ミスによる怨恨殺人ではないかと疑われるが……(『夜よ鼠たちのために』)

 

クラブに勤める牧子、業績のために中年女性と寝る銀行員・鉄男、莫大な財産を持つ修平、修平と共に豪邸で暮らす静子。4人の思いが交錯する中、牧子は鉄男にとある殺人計画を持ちかける。(『二重生活』)

 

今をときめく人気俳優・支倉は妻・撩子のために自分とそっくりな顔を持つ男を探していた。やっと条件にぴったりな人物を見つけるが、その男を雇ってから次第に支倉の周りがおかしくなっていき……(『代役』)

 

無実の罪で6年間収監されていた主人公は、かつて自分を陥れた恋人・恭子と舎弟・征二を殺そうといきり立つ。しかし事件にはまだ隠された事実があった。(『ベイ・シティに死す』)

 

落ちこぼれ高校の新米教師である麻沙は、不良たちからマザーと呼ばれ慕われていた。ある日、素行不良で退学となった不良グループから「大変なことになった」と電話がかかってくる。(『ひらかれた闇』)

 

 

 

 

 

 

 

 

面白かったー!短編集なのにひとつ読み終わるたびに長編ミステリを読破したときのような達成感に襲われました。

 

奇妙な依頼と代役が好きです。特に代役。足癖が主人公のものだったという一文にぞわっとした。

ていうか入れ替わりネタ多いな?叙述にしても反則アウトな描写が多かった気がします。もうちょっと「騙された!」っていう爽快感が欲しかった。

ひらかれた闇が人気ないみたいだけど青春ミステリっぽくて私はわりと好き。マザーかわいい。

 

 

 

 

『仄暗い水の底から』鈴木光司

 

 

あらすじ:幼い娘・郁子と2人でマンションに引っ越してきた淑美。ある日屋上で真新しいキティちゃんのバッグを見つけるのだが……(『浮遊する水』)

 

教師の謙介は恩師・佐々木に誘われて第六台場の調査に向かう。そこはかつて謙介の親友・敏弘が恋人を捨ててきたと自慢していた場所でもあった。(『孤島』)

 

マグロ漁船に乗る和男は海上で無人のクルーザーを発見する。乗組員を代表してクルーザーに乗り込んだ和男だが、不審な航海日記を発見し……(『漂流船』)

 

気性の荒い漁師・裕之は行方不明になった妻・奈々子の死体を自身の漁船のいけすの中から発見する。自分が殺したことを思い出し、海上でどうにか隠蔽しようとするが……(『穴ぐら』)

 

牛島はヨットの上でセールスマン夫妻のしつこい勧誘を受けていた。陸が近づいてきてほっとしたのもつかの間、ヨットが何かに引っかかり停止してしまう。(『夢の島クルーズ』)

 

劇団『海臨丸』の舞台稽古中、上の階から水が滴り落ちてきた。音響係・神谷は監督の指示で上階の女子トイレを確認しに向かうのだが……(『ウォーター・カラー』)

 

探検を趣味とする杉山は友人・榊原と共に未知の鍾乳洞を発見する。ところが不慮の事故により榊原が死亡、通ってきた道は榊原の巨体と岩により塞がれてしまい……(『海に沈む森』)

 

 

 

 

 

初めて読むはずなんですがなぜか夢の島クルーズだけデジャヴを感じました。これだけどこかで読んだことあるのかな?

 

個人的には漂流船が好きです。こういう直接的には描写しないものの容易にバッドエンドが想像できる終わり方大好き。

『浮遊する水』も幽霊抜きでぞっとする真相で良かったです……

 

『ディリュージョン社の提供でお送りします』はやみねかおる

 

 

あらすじ:登場人物になりきり、物語の世界をリアルに体験することができる『メタブック』。本を一切読まない森永美月は、ひょんなことからその『メタブック』を提供するディリュージョン社に就職してしまった。

今回の依頼人・佐々木のオーダーは「不可能犯罪のミステリ小説」。新人である森永は天才シナリオライター・手塚と共に舞台を整えるが、予定にない犯罪予告や殺人未遂事件が相次いで起きてしまう。

メタブック内に本物の殺人鬼が紛れ込んでいる……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はやみね先生の新シリーズ!わーい!

 

ミステリあるあるがふんだんに織り込まれていて推理小説オタクとしては非常に面白かったです。名探偵の掟みたいな。ちょうどこの前「まだらの紐」を読んだばかりなのでなんだか嬉しくなりました。

私のような活字中毒からしたら美月ちゃんが異常者すぎる……

 

森永美月といえばマチトムですが、結局彼女は何者なんでしょうか……?もしや未来の内人の娘……??めちゃくちゃ気になるから早く2巻読みたい。

マチトム読者なら思わずにやけてしまうくらい美月ちゃんが内人でした。内人もいずれ就活で苦しむんだろうな。

 

 

ひらがな名義なのに人が死ぬの!?とハラハラしてましたが杞憂でしたね。

個人的には美月が真相に辿り着くのがちょっと唐突かな?って思いましたが、それを差し引いても十分面白かったです。

はやみね先生本当に好きです〜……

 

『葉桜の季節に君を想うということ』歌野晶午

 

 

あらすじ:性に奔放な男、成瀬将虎は地下鉄への飛び込み自殺を図っていた女性・麻宮さくらを助ける。セックスだけの仲だった今までの女たちとは違い、さくらの内面に惹かれていく将虎。やがてふたりはデートを重ねるようになる。

時を同じくして、将虎は超お嬢様の久高愛子に『身内の死の真相を調べてほしい』と依頼される。先日轢き逃げで死亡した久高隆一郎が保険金のために殺害された可能性があるというのだ。将虎はさくらとのデートと並行して調査を進めるが……

 

 

※ネタバレです!↓

 

 

 

 

 

 

 

 

日本の叙述トリックといえば『向日葵の咲かない夏』『殺戮にいたる病』『イニシエーション・ラブ』あたりに並んでメジャーなこの作品。

叙述だと知りつつ読んだのに華麗に騙されましたね……ミステリというよりアクション?娯楽小説?って感じです。

 

さくらが蓬莱倶楽部の人間であることは早い段階で見抜けるんですが(初デートで蓬莱倶楽部の名を出した瞬間に狼狽えた)まさか節子=さくらだなんて予想だにしませんでした。売春する70代が想像できない……

真相をぼかして描写するのではなく反則ぎりぎりの言い回しをするところがちょっとアンフェアな気も。現役高校生とか引っかかるに決まってんでしょ!?

 

「無職の綾乃はどこから遊ぶ金を捻出してるんだろう?」とか「掃除夫のおじさんがいきなり若い人に代わってたら不審に思われないか?」とかいろいろ引っかかるとこはあったんですけどね。

あまりに綺麗に騙されると逆に爽快感を覚えるものですけど、本作は「え……?まじで……?」がじわじわ襲ってくる感じです。

 

面白かったですが、個人的には同じ歌野晶午さんの『絶望ノート』の方が好みかな。