こすなの読んだもの

読んだ本の備忘録

『占星術殺人事件』島田荘司

 

 

 

あらすじ:6人の処女からそれぞれの星座にちなんだ身体のパーツを切り取り、それを組み合わせることで『アゾート』を作るーー

殺された梅沢平吉の手記にはそんなおぞましい計画が書かれており、実際に平吉の娘たちが身体を切り取られた死体となって日本各地から発見されてしまう。

アゾートはどこにあるのか?平吉と娘たちを殺したのは誰なのか?日本中のミステリーマニアが持論を展開するも、事件は結局迷宮入りとなった。

それから40年後、占星術師である御手洗潔はとある依頼をきっかけにこの事件に興味を持ち、唯一の友人である石岡と共に調査を開始する。

 

 

 

 

 

 

島田荘司に初めて手を出しました。

推理マニアなら絶対に読むべきだと言われているこの本。なぜか今日まで手つかずだったので今更ですが読みました。いやはや凄かった……

金田一でネタバレしてるらしいですが私は全く読んだことがないのでただただ感嘆。トリックを聞いてもしばらく理解できずに図表と睨めっこしてました。この衝撃を真っさらな状態で味わえたのは幸運だった……

読者への挑戦は5秒でホールドアップ。私に分かるわけがない。

 

 

冒頭の手記に出てくるマニアックな用語といい緯度経度のくだりといい取っつきにくい文章が多いんですが、がんばって読み進めた価値はありました。前半は安楽椅子探偵状態なので説明ばかりでちょっとだれるかもですね。

でも平吉の手記の人物名と実際の名前を変える必要はあったのかな?ただややこしくなっただけのような。

 

時子の手記がなんとも悲しかった。決して恵まれていたとは言えないお母さんの名前が『多恵』なのが皮肉ですね。

時子の処女喪失の相手には触れてませんよね?誰だったんだろうか……職場の人とか?

 

あと御手洗がかわいい。

『要するに今考えると、御手洗は私に就職なんてくだらないと言いたかったらしい。性格がひねくれているから、君があまり僕のところへ来れなくなると淋しいから就職はやめて欲しいと素直に言えないのだ。』

 

「パンと……牛乳……食べる……以外に……どうするんだ?」

 

 

かわいい。

 

 

総括としては本当〜〜〜に面白かった。最近は叙述ばっか読んでましたがトリックで勝負する本格推理はやっぱり良いですね。文章が少々重いですが御手洗と石岡の掛け合いが軽快で上手い具合に中和されてた気が。

御手洗シリーズはこれから読んでいこうと思います。

 

 

 

『死のロングウォーク』リチャード・バックマン

 

 

 

あらすじ:"少佐"と呼ばれる人物が支配する近未来のアメリカ。そこでは100人の少年が最後の1人になるまで行進し続ける『死のロングウォーク』が行われていた。歩行速度が落ちれば警告、3回以上警告を受ければ射殺…というルールの下で少年たちはひたすら歩み続けるが……

 

 

 

 

リチャード・バックマンスティーブン・キングの別名義なんだそうです。

まず設定が面白い!デスゲーム系好きな人はあらすじ聞いただけでわくわくしますよね、私もそうです。

 

てっきり無作為に"選ばれてしまった"子たちが強制出場させられてると思ってたので、立候補制だとわかって腰抜かしました。私だったら絶対出ません……勝算ゼロだし……

作中でも言われてましたけどみんな程度の差はあれど自殺願望ありますよね。いくら魅力的な賞品があっても正気の沙汰ではない。

 

 

 

マクヴリーズは本当にギャラティのことが好きだったのかなあ。

私のフィルターを抜きにしてもあそこまで助けてくれるのは友情以外の何かがあってもおかしくない気がごにょごにょ……

エイブラハムが好きだったので脱落時は凹みました。スクラムとマクヴリーズとベイカーの最期も悲しかった。

 

 

あとラストがいまいち釈然としないんですけど気が触れてしまったってことでいいのかな……?それとも死んじゃったのか……?

私としてはギャラティが少佐を殺して自分も撃たれて共倒れエンドであってほしかったんですけど、そういうカタルシスを与えないのがスティーブン・キングらしいのかもしれません。

 

 

私にはちょっと合わなかったかな!でも人間関係の描写はすごく好き。

自分以外の全員を蹴落とさないと駄目だとわかっているのに、それでも友達になってしまうのがね。三銃士にはロングウォーク以外の場所で出会ってほしかった。

あと邦題は『ロングウォーク』だけで良かった気がする。『死の』を付けたことで逆にチープな印象になってしまってるというか。

 

 

めちゃくちゃどうでもいいんですが濃縮食を一度食べてみたい……味気になる……

 

『都会のトム&ソーヤ 13巻 黒須島クローズド』はやみねかおる



あらすじ:内人と創也のもとに伝説のゲームクリエイター・黒須玄充郎からパーティーへの招待状が届く。指定された豪華客船に乗り込んでみると、『黒須の遺産』を賭けた命がけのゲームが始まってしまった!覚悟を決めた者だけがゲームの舞台・黒須島へと上陸するが……









創也異様にかわいくなかったですか?(第一声がそれか)
観覧車で卓也さんにおんぶされてるの意味わかんないくらいかわいい……挿絵もかわいい……なにこいつ……


「創也さま〜!」「だいじょうぶですか、だいじょうぶですか、だいじょうぶですか!」の卓也さんも癒しだった。マオさんへの反応といい卓也さんの珍しいリアクションが多かったですね。


でもやっぱ創也はお見合いとかさせられちゃうのか……まだ中2なのに……
「ぼくは心にビビッときた女の子と恋愛するんだ」がかわいかったけど、こいつがビビッとくる女の子は果たして地球上に存在するのだろうか。
もう南北で結婚すればいいと思うんですけど……(名推理)



ユラの日常パート面白かったな。彼女も普段は普通の中学生を演じてるんですね。

『儚い羊たちの祝宴』米澤穂信



あらすじ:幼い頃から丹山家の令嬢・吹子に仕える夕日。吹子に勧められた本を次々に読み、読書の面白さの虜になるのだが……?(『身内に不幸がありまして』)

大富豪の男とその愛人の間に生まれたあまり。貧しかった母の死をきっかけに父の館に住もうとするが、妾の子として離れに住む男の世話をすることを命じられ……(『北の館の罪人』)

優秀な使用人である屋島は美しい別荘・飛鶏館の管理を任せられる。自分の技術に自信を持っている屋島だが、飛鶏館が使用されないことに不満を抱き始め……(『山荘秘聞』)

名家・小栗家の一人娘である純香は厳しい祖母にうんざりする毎日を送っていた。ところがある日、同い年の使用人・五十鈴を与えてもらったことで毎日が楽しく変わり始める。(『玉野五十鈴の誉れ』)

成金である鞠絵の父は「厨娘」と呼ばれる一流の料理人・夏さんを雇う。おいしさは確かに一流なのだが、材料や作り方に不可解な点がいくつかあり……(『儚い羊たちの晩餐』)









※ネタバレしてます!↓










すごかった……わたしこういうラスト一行で衝撃が走る小説大好きなんですよ……
一番好きなのは玉野五十鈴の〜です。ぞわーっとした。五十鈴ちゃんの仕事人っぷりに東条斬美さんを重ねてしまった。



・身内に不幸がありまして
フーダニットは登場人物が少ないせいもあって簡単なんですが、夕日ちゃんまで殺しちゃうのは……お前……
「愛でなくて忠誠だったら〜」の一文で唸りました。報われない主従百合。
完璧超人なお嬢様なのに倫理観だけが決定的に欠けてるのキャラ造形としてすごく好きです。吹子だけは夏さんから逃れられたのか……




・北の館の罪人
元美術部のくせに絵の材料であることに気づかなくてめちゃくちゃ衝撃でした。犯人も衝撃。
詠子ちゃんがいいキャラしてて好きなんですけどラストのあの台詞は犯行に気づいてますよね……?でも冒頭ではあまりの絵は別館に飾られている(=紫になりにくい)わけで。詠子ちゃんも殺された……?
髪の毛を塗り込めたのもわざとなんだろうな。毒に気づきつつもあえて死を享受した早太郎さんの気持ちを考えると……




・山荘秘聞
アホなのでてっきり殺したもんだと思ってました。レンガとかで殴ったのかと……よく読んだら札束だったんですね……
完全にミスリードされました。珍しい肉とか引っかかるに決まってんじゃん!!
口約束は信用しないから前もって金を払うって言ってたもんな。





・玉野五十鈴の誉れ
濃厚な主従百合その2。ありがとう世界。
微笑ましいなあかわいいなあ→ファッ!?→つらい→マジか……って気分が浮き沈みしまくった。ババアざまあ!!!
「助けて、五十鈴」に五十鈴は返事をしていてくれたんだと思います。純香がハピエンを迎えてくれてよかったですが、次のエピソードでハピエンもクソもなくなることになる。





・儚い羊たちの晩餐
これまでに出てきたお嬢様全員が所属している大学サークル『バベルの会』。そこから除名された鞠絵が夏さんを通じて会長に復讐を企てようとするも、夏さんの料理法を知らなかったがために予想外のオチに繋がるお話。
無知なのでアミルスタン羊はただの羊だと思っていたのですが、途中でなんかおかしいぞと思いメデューズ号の筏で気づきました。
もし夏さんが父の前で調理する許可をもらってたら唇切断ショーを見せられたんでしょうか……どちらにせよこの家の浪費癖だと近いうちに没落しそうですね。




2chでよく推されてるので読んだのですが本当に面白かった。後味は悪いものの妙な爽快感がありました。
元ネタを理解するためにももっと学を深めなければ……

『都会のトム&ソーヤ 12巻 IN THE ナイト』はやみねかおる


あらすじ:校舎を使った大規模な障害物競争に出ることになった内人。創也と二人三脚で突破しなければならず絶望するのだが……
体育祭、文化系クラブvs生徒会、内人に届いたラブレターが主題となった短編集。





箸休め的なエピソード集かなと思って読み始めたのですが本全体のトリックが凄かった……全然気づきませんでした。不覚。
夢水清志郎シリーズの『卒業』の仕掛けもググるまでわかんなかったんですよね。はやみねさんのこういう工夫好きです。

もともとメタ的な文章が多いシリーズなので特に違和感も感じず、見事に引っかかりました。今回はいつも以上にメタだなあとは思いましたが。
まずサブタイが「IN THE ナイト」な時点で気づくべきだったんですよね!!!冒頭は夢野久作パロだし!!!
作中作ネタは大好きですが何分バカなので頭がこんがらがる。もっかい読み直したいなあ……



どうでもいいんですが、内人たちが中2だということを思い知らされて時の流れにンンッってなりました。読み始めたときわたしは小学生だったのにな。今や同い年どころか高校卒業ですよ……かなしい……

『孤島の鬼』江戸川乱歩


あらすじ:貿易会社に勤める男・箕浦は同僚・木崎初代と恋に落ち、交際を始める。しかし箕浦に片思いする美青年・諸戸道雄がなぜか初代に求婚。箕浦一筋の初代はそれを拒否するのだが、しばらくして初代が何者かに殺されてしまう。箕浦が雇った探偵も殺され、箕浦は諸戸の嫉妬による殺人ではないかと疑うのだが……




※ネタバレ含みます!↓













諸戸道雄を幸せにしてえ〜〜〜〜ッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!
めっっっっっっっちゃくちゃ良質なホモでした。こんなに美しくて切ないホモがあっただろうか。


箕浦は生粋のノンケなんですが、美形で医学生で将来有望な諸戸が平凡な自分に惚れていることに優越感を感じています。「優れた人間に好かれている自分はより優れている!」と自信を持てるからでしょう。だから諸戸の想いを完全には拒絶しないんですが、それが逆に残酷。
応える気がないならちゃんと突っぱねてあげようよ……



諸戸が死んだのは悲しいですが、彼にとってはあの状況での死は救済だったのかもしれません。
ずっと好きだった人が女性と結婚した上、その2人が経営する病院の院長になるなんて死ぬよりつらいことですよね。ずっと幸せな夫妻を見続けなければいけないわけですし。秀ちゃんの手術をしたときどんな気持ちだったんですか……

バームクーヘンエンドが特大地雷な腐女子なのでめちゃくちゃキツかった。何がムカつくって諸戸の恋心を1ミリも考慮せずに「私の外科医院の院長になってほしい」とかほざくところ。
やはりお前らは洞窟で心中すべきだった(刃物を構える)


でも秀ちゃんは好きです!暗黒館の殺人シャム双生児が性癖になった人間なので、吉ちゃんから秀ちゃんへの性的干渉のくだりはめちゃくちゃ興奮しました。



「君はわかっていてくれるだろうね。わかってさえいてくれればいいのだよ。それ以上望むのは僕の無理かも知れないのだから。だが、どうか僕から逃げないでくれたまえ」


「僕が独りで思っている、せめてもそれだけの自由を僕に許してくれないだろうか。ねえ、箕浦君、せめてそれだけの……」


「君は嫉妬しているの」
「嫉妬している。そうだよ。ああ、僕はどんなに長いあいだ嫉妬しつづけてきただろう」


「あの人が死んでからも、君の限りない悲嘆を見て、僕がどれほどせつない思いをしていただろう。だが、もう君、初代さんも秀ちゃんも、そのほかのどんな女性とも、再び会うことはできないのだ。この世界では、君と僕とが全人類なのだ」


箕浦君、地上の世界の習慣を忘れ、地上の羞恥を捨てて、今こそ、僕の願いを容れて、僕の愛を受けて」

↑ここらへん好きすぎてだめです。諸戸幸せになれ(n回目)
箕浦って諸戸の気持ちを受け入れる気は一切ないくせに諸戸が諦めて他の人と結婚したらブチ切れそうなイメージあるんですよね……ほんと小悪魔にも程がある。
「孤島の鬼」は丈五郎だけじゃなくて箕浦のことも指してると思う。


ラスト一行が本当に切なかった。諸戸はなんでこんな自己中クソノンケを好きになってしまったんだろう……
この時代は現代よりも一層同性愛へのあたりが強かったと思うので、将来が約束されていたであろう諸戸の苦しみは計り知れないです。

とても興味深い一冊でした。読んでよかった。

『都会のトム&ソーヤ 11巻 DOUBLE(上下)』はやみねかおる


あらすじ:栗井栄太ご一行から新作R・RPG『DOUBLE』に招待された内人と創也。ところがDOUBLEはR・RPGではなくゲーセンの一角に設置された体感型コンピューターゲームだった。違和感を感じながらもプレイを開始する2人。次第にゲームと現実の境目が曖昧になっていき……




小学生の頃からずっと大好きなシリーズ。しばらく読書に手付けてなかったので知らない間に続編いっぱい出ててびっくりしました(ちなみにこれは2013年刊行)
ミステリーのトリックとしてはありきたりかもしれませんが、ゲームと現実の区別が付かなくなっていく過程にぞくっとしました。真田女史かわいいよ真田女史!

あとがきにも書かれていましたが、だんだん内人と創也の見据える未来に違いが出てきているような気がしてすごく不穏。この2人にはいつまでも砦にいてほしいんだけどな……
涼太に抱きついた創也を慌てて引っぺがす内人にほほう……?となりましたね。

内人のサバイバル講座が大好きな読者は私だけじゃないはず。